Uterine Fibroid
子宮筋腫
子宮筋腫は30代以上の女性の2〜3割に見られる良性腫瘍です。
症状の有無や程度、妊娠希望の有無によって
「経過観察」から「薬物療法」「手術療法」まで、
最適な管理方針を一緒に考えていきます。
過多月経 / 貧血 / 不妊 / 過多月経 / 子宮腔内筋腫 / 粘膜下筋腫 / 筋層内筋腫 / 漿膜下筋腫
子宮筋腫とは
子宮筋腫は、子宮の筋層(平滑筋)から発生する良性腫瘍です。悪性(がん)ではなく、自然に消えることもありますが、加齢・閉経前にかけて増大する傾向があります。
30歳以上の女性の20〜30%に認められるとされており、決して珍しい疾患ではありません。ただし、大多数は無症状で経過観察のみで問題ない場合が多く、治療が必要かどうかは症状・大きさ・位置・年齢・妊娠希望の有無によって個別に判断します。
産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023(日本産科婦人科学会)では、子宮筋腫の管理方針は症状・部位・大きさ・妊孕性温存希望の有無を総合的に評価して決定することが推奨されています。
発生部位による分類
子宮筋腫は発生する場所によって3種類に分類されます。どの部位に生じるかによって、症状の出方や適切な治療法が異なります。
TYPE 0-2
粘膜下筋腫
子宮内腔側へ突出する筋腫。少量でも強い症状が出やすく、月経過多・不妊・流産の原因になりやすい。
子宮鏡下手術の主な適応
MyoSureまたはレゼクトスコープで、お腹を切らずに摘出できる場合があります。
最多タイプ
筋層内筋腫
子宮の筋肉の中に生じる最も多いタイプ。大きくなると月経過多・腹部膨満感・頻尿・便秘などを来す。
大きさや位置によって薬物療法・腹腔鏡下手術・開腹手術などを検討します。
症状が出にくい
漿膜下筋腫
子宮の外側(腹腔側)に向かって突出する筋腫。月経への影響は少ないが、大きくなると腹部圧迫感・疼痛が出ることがある。
無症状なら経過観察が基本。有茎性(茎がある)の場合は茎捻転に注意。
症状
子宮筋腫があっても無症状のことが多く、健診や他の目的での受診で偶然発見されることも少なくありません。治療の必要性は症状の有無と程度によって判断します。
症状がある場合の主な訴え
| 症状 |
関連の深い筋腫の種類 |
| 月経量が多い(過多月経) |
粘膜下筋腫・大きな筋層内筋腫 |
| 貧血(めまい・倦怠感) |
過多月経に伴う鉄欠乏性貧血 |
| 強い月経痛 |
粘膜下筋腫・子宮腺筋症合併 |
| 下腹部の膨満感・圧迫感 |
大きな筋腫全般 |
| 頻尿・排尿困難 |
膀胱を圧迫する筋腫 |
| 便秘・排便困難 |
直腸を圧迫する筋腫 |
| 不妊・流産・早産 |
粘膜下筋腫・子宮内腔変形を来す筋腫 |
このような場合はご受診ください
ナプキンが1〜2時間で交換が必要なほどの出血量 / レバー状の血の塊が出る / 内科や職場健診でひどい貧血を指摘された / なかなか妊娠しない / 下腹部に硬いしこりを感じる
診断方法
まず経腟超音波(エコー)で子宮の形態と筋腫の位置・大きさを確認します。より精密な評価が必要な場合はMRI検査を追加し、手術適応の判断や不妊治療方針の決定に役立てます。
経腟超音波検査
最初の検査として行います。筋腫の位置・数・大きさをリアルタイムで確認できます。
MRI検査
筋腫の正確な位置と数、子宮腺筋症との鑑別、手術方針の決定に有用です。手術を検討する際や不妊治療では必要に応じて実施します。
血液検査
過多月経による貧血の程度(血算・フェリチン)を確認します。また悪性腫瘍の鑑別に腫瘍マーカー(CA125など)を参考にすることもあります。
子宮筋腫の確定診断には本来は病理検査(摘出組織の顕微鏡検査)が必要ですが、通常の診療では超音波・MRI・子宮鏡の画像所見から診断します。
治療・管理方針
治療が必要かどうか、どの治療法が適切かは、症状の程度・筋腫の位置と大きさ・年齢・妊娠希望の有無を総合的に考えて決定します。
経過観察
無症状または症状が軽い場合、定期的な超音波検査で大きさの変化を確認しながら経過観察するだけで十分なことが多いです。
特に閉経が近い方は、閉経後に女性ホルモン(エストロゲン)が低下すると筋腫が縮小することが多いため、閉経まで経過観察という選択も合理的です。
薬物療法(保存療法)
手術を行わず、症状を和らげる・筋腫を縮小させることを目的とした治療です。
| 治療法 |
目的・特徴 |
| 鎮痛剤(NSAIDs) |
月経痛・骨盤痛の対症療法。筋腫自体には影響しない。 |
| 鉄剤 |
過多月経による鉄欠乏性貧血の治療。 |
| 低用量ピル(OC/LEP) |
月経血量を減らし月経痛を軽減。筋腫を縮小させる効果はないが、症状コントロールに有用。 |
| LNG-IUS(ミレーナ) |
子宮内に留置する黄体ホルモン放出システム。過多月経に有効。粘膜下筋腫が大きい場合は使用できないことがある。 |
GnRHアンタゴニスト
(レルミナ錠・内服) |
エストロゲンを低下させて筋腫を縮小させる偽閉経療法。手術前の前処置や、閉経まで待機する「逃げ込み療法」として使用。
ホットフラッシュ・関節痛などの更年期様症状が主な副作用。骨密度低下のため6か月まで。 |
GnRHアゴニスト
(リュープロレリン酢酸塩・注射) |
同じく偽閉経療法。月1回の皮下注射。同様に6か月の制限あり。 |
薬物療法は症状を和らげたり筋腫を一時的に縮小させることはできますが、服薬を中止すると筋腫が再び大きくなることがほとんどです。根治的な治療ではありません。
ピル・LNG-IUSについて詳しくは
「生理痛・避妊・PMS — あなたに合ったピルを選ぶために」もご参照ください。
手術療法
症状が強い・貧血が高度・不妊の原因と判断される・筋腫が急速に増大しているなどの場合に検討します。
妊娠希望があるか否か、筋腫の位置・大きさ・数によって術式が異なります。
お腹を切らず、子宮鏡(細いカメラ)を腟から子宮内に挿入して粘膜下筋腫を摘出します。
子宮を温存でき、術後の回復が早く、外来または短期入院で対応可能な場合があります。
適応の目安(産婦人科内視鏡手術ガイドライン2024年版 CQ35)
子宮腔内への突出度が高い粘膜下筋腫(特に突出度50%以上)が主な適応です。筋腫の大きさ・位置・突出度などにより手術の可否が変わりますので、子宮鏡検査やMRI検査で詳細を評価した上でご相談します。
当院で使用する機器
Hologic MyoSure
電気メスを使わず組織を機械的に切除・吸引。熱損傷がなく正常子宮内膜への影響が少ない。
Karl Storz レゼクトスコープ
ループ型電気メスで筋腫を切除。突出度が比較的低い筋腫や大きめの筋腫にも対応可能。
MyoSure子宮鏡手術について詳しくはこちら
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子宮鏡下手術(器具の選択について)
お腹に小さな穴を開け、腹腔鏡で筋腫だけを摘出。子宮を温存し、妊娠希望がある方に選択されます。筋腫の大きさが概ね7〜8cm以内、数が少ない場合に適応となります。
子宮ごと摘出するため、術後の再発がなく根治的です。妊娠を希望しない方で症状が強い場合に選択されます。卵巣は温存できるため、術後に更年期症状が起きることはありません。
その他の治療法
子宮動脈塞栓術(UAE)は筋腫への血流を遮断して縮小を図る治療法です。また集束超音波治療(FUS/MRgFUS)も選択肢の一つです。いずれも当院では行っておらず、適切な医療機関に紹介いたします。
当院で対応できない治療が必要な場合
当院は子宮鏡下手術(MyoSure・レゼクトスコープ)に対応しています。腹腔鏡下手術や開腹手術が必要な場合は、責任を持って適切な医療機関にご紹介いたします。
妊娠・不妊との関係
子宮筋腫があるだけで不妊になるわけではありませんが、筋腫の位置と大きさによっては不妊・流産・早産の原因になることがあります。
| 筋腫の種類 |
妊娠・生殖への影響 |
対応 |
| 粘膜下筋腫 |
着床障害・流産・早産のリスクが高い |
手術摘出を検討(子宮鏡下) |
| 筋層内筋腫(大) |
子宮内腔の変形によっては不妊の原因になりうる |
MRI・子宮鏡で評価後に判断 |
| 漿膜下筋腫 |
一般に妊娠への影響は少ない |
経過観察が基本 |
産婦人科内視鏡手術ガイドライン2024年版(CQ35)では、子宮腔内へ突出する粘膜下筋腫に対して子宮鏡下手術が推奨されており、着床不全・流産を繰り返す症例でも有用とされています。
不妊治療中で子宮筋腫を指摘されている方は、
不妊治療のご案内もあわせてご覧ください。
よくある質問
子宮筋腫と診断されましたが、放置しても大丈夫ですか?
無症状で小さい筋腫であれば、定期的な経過観察のみで問題ない場合がほとんどです。ただし、過多月経による貧血が進行している場合や、急速に大きくなる場合は治療を考慮します。また、悪性腫瘍(子宮肉腫)との鑑別が重要なことがあります。定期受診でしっかり経過を見ていくことが大切です。
子宮筋腫自体がほんの稀にしかがん化しないとされていますが、子宮肉腫(平滑筋肉腫)という悪性腫瘍が、外見上は筋腫と似て見えることがあります。急速な増大や、閉経後の大きくなる筋腫には注意が必要です。
妊娠中に子宮筋腫が見つかりました。どうすればいいですか?
多くの場合、妊娠中の子宮筋腫は経過観察のみで出産まで問題なく過ごせます。ただし位置や大きさによっては切迫早産・胎盤早期剥離などのリスクが高まることがあるため、担当医と密に連絡を取りながら管理します。妊娠中の筋腫核出術は原則行いません。
子宮全摘術であれば再発しません。筋腫核出術(子宮を残す手術)では、術後5年で2〜3割の方に再発が見られます。子宮鏡下手術も同様に再発の可能性があります。ただし、閉経が近い方は閉経後に筋腫が縮小するため、長期的に問題になることは少ないです。
子宮筋腫のご相談は中原クリニックへ
過多月経・貧血・不妊の症状がある方、健診で筋腫を指摘された方、
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