クリニックだより

婦人科 / 不妊治療・流産

不育症(反復流産・習慣流産)について

当院で不妊治療中に流産を経験された方へ。
原因を知り、適切な専門機関へつながるためのご案内です。

当院では不妊治療を行う中で、残念ながら流産を経験される方がいらっしゃいます。このページは、当院で治療中に流産を繰り返された方が不育症について正しく理解し、必要な検査・専門医療機関へスムーズにつながれるよう情報をまとめたものです。
※不育症の専門外来・確定診断・治療(ヘパリン療法等)は、専門施設での対応が必要です。当院では初期的なスクリーニング検査と情報提供を行い、専門施設へご紹介します。

まず知っておいてほしいこと
流産は「珍しいこと」ではない

1回の妊娠で約10〜15%が流産に終わります。そのほとんどは胎児(受精卵)の染色体異常によるもので偶発的です。治療しなくても次回は正常に出産できることが多く、「自分のせい」ではありません。

不育症の定義:2回以上の流産・死産

妊娠はするものの2回以上の流産・死産を繰り返し、出産に至らない状態を不育症(Recurrent Pregnancy Loss)と言います。日本人の約40人に1人(4.2%)に見られます。

原因不明が多いが、諦めなくてよい

不育症の約70%は検査をしても明確な原因が見つかりません。しかし原因不明でも次の妊娠で出産できる方は多く、丁寧な妊娠管理と心理的サポートが有効と報告されています。

治療できる原因もある

抗リン脂質抗体症候群(APS)は、不育症の原因の中でも有効な治療がある代表的な原因です。適切に診断・治療を受けることで、出産できる可能性が高まることが報告されています。

🔬
不育症の主な原因
不育症の主な原因(頻度の目安)
原因 頻度の目安 治療・対応
胎児(受精卵)染色体異常 約41% 偶発的なものが多く、毎回同じ原因とは限りません。体外受精を行っている場合にPGT-Aが検討されることがありますが、適応は専門施設で慎重に判断されます
抗リン脂質抗体症候群(APS) 約9〜11% 低用量アスピリンとヘパリンを用いた治療が行われます。確定診断と治療方針の決定は専門施設で行います
夫婦どちらかの染色体異常(保因) 約6% 次回妊娠で約2/3が出産可能。遺伝カウンセリング・PGT-SRの検討(専門施設へ)
子宮形態異常(中隔子宮など) 約3% 中隔子宮では子宮鏡下手術が検討されることがあります(当院でも対応)。適応は子宮の形や流産歴を踏まえて判断します
内分泌異常(甲状腺・糖尿病など) 約12% 顕性甲状腺機能低下症・糖尿病は治療により改善。内科との連携が必要
原因不明 約70% 精神的サポートと丁寧な妊娠管理(テンダーラビングケア)が有効
流産した組織の絨毛染色体検査を実施すると、胎児側の染色体異常が判明するケースが多く、真の「原因不明」は25%程度まで減少します。流産時に組織を保存・検査するかどうかについては、担当医にご相談ください。

🏥
当院でできること・専門施設をご紹介すること

当院で対応できること

流産後の相談・不育症の説明

初期スクリーニング検査
(超音波・ホルモン採血・抗リン脂質抗体・甲状腺など)

子宮形態の評価・子宮鏡検査
(中隔子宮では子宮鏡下手術が検討されることがあります(当院でも対応)。適応は子宮の形や流産歴を踏まえて判断します。)

検査結果の説明・専門施設への紹介状作成

流産後の継続的な不妊治療サポート

専門施設へご紹介すること

抗リン脂質抗体症候群(APS)の確定診断
(12週間後の再検査・最終診断は専門施設で)

ヘパリン療法・妊娠中の抗凝固治療管理

夫婦染色体検査・遺伝カウンセリング

PGT-A/PGT-SR(着床前染色体検査)

不育症専門外来での精密評価・治療全般

紹介先の例:名古屋市立大学病院などの不育症専門外来

💊
治療できる原因「抗リン脂質抗体症候群(APS)」について

不育症の原因の中でも、抗リン脂質抗体症候群(APS)は有効な治療がある代表的な原因です。見逃すと流産を繰り返し続けますが、適切に診断・治療すれば出産できる可能性が大きく高まります。

APSとは
本来、自分の体を守るはずの免疫機構が、細胞膜の成分(リン脂質)に対して誤って抗体(抗リン脂質抗体)を産生し、血液が凝固しやすくなる自己免疫疾患です。胎盤の血流が障害されることで流産・胎児死亡が起こります。30〜40代の女性に多く(男女比1:4〜5)、全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患を合併することもあります。
診断の流れ(重要:1回の検査では確定しません)
1

まずは診療内容やご希望に応じて方針を相談:抗カルジオリピン抗体IgG/IgM、ループスアンチコアグラント(LA)などを採血検査を行う場合と、早い段階で不育症専門施設へご紹介する場合があります

2

陽性の場合、専門施設へご紹介12週間以上あけて再検査し、2回連続陽性が確認されてはじめてAPSと確定診断できます(一時的な陽性もあるため)

3

専門施設での治療:妊娠判明後から低用量アスピリン内服+ヘパリン自己注射を開始し、分娩後も継続(妊娠中のヘパリン自己注射は保険適用)

APS治療の効果:APSが原因の不育症の方が適切な診断のうえでアスピリン+ヘパリン療法が行われると、出産に至る可能性が高まることが報告されています。確実に専門施設での診断・治療を受けることが重要です。

🌿
生活習慣で心がけること
🚭
禁煙

喫煙は流産リスクを高めます

🍷
禁酒

妊娠を試みる期間から控えることを推奨

カフェイン制限

過剰摂取は避ける(1日2杯程度以内を目安に)

💊
葉酸サプリ

妊娠前から1日0.4mgの葉酸摂取を推奨

⚖️
適正体重

過度な低体重・肥満は避け、健康的な体重を維持

流産の経験と向き合うこと

流産を繰り返す経験は、身体的な痛みだけでなく深い悲しみ・喪失感・不安・自責感を伴います。「自分のせい」ではないこと、そして多くの方が適切なサポートを受けながら出産できていることを知っておいてください。

受診の際には、気持ちの面でも率直にお話しください。必要に応じて心理的サポートや専門窓口のご案内もできます。

💬
よくあるご質問
当院で不妊治療中に1回流産しました。不育症の検査は受けられますか?
不育症の定義は2回以上の流産です。1回だけの場合は通常の不育症検査の対象ではありませんが、過去に死産がある場合や、流産が繰り返される可能性が高いと判断されるなど、状況によっては早めの相談が勧められることもあります。
検査結果が陽性だった場合、当院で治療まで受けられますか?
当院では初期スクリーニング検査と結果説明を行います。APSの確定診断(12週間後の再検査)や、ヘパリン療法などの確定診断後の治療管理については、専門施設へご紹介します。子宮形態異常(中隔子宮)が見つかった場合は子宮鏡下手術が検討されることがあります(当院でも対応)。適応は子宮の形や流産歴を踏まえて判断します。
専門施設へ行く間も、不妊治療は当院で続けられますか?
はい。不育症の検査・治療を専門施設と並行しながら、当院での不妊治療(タイミング療法・人工授精・卵管検査など)を継続することができます。不育症の管理は専門施設、不妊治療は当院、という形で連携することが可能です。
当院に来たことがなく、不育症だけで受診したいのですが?
当院は不育症専門外来ではなく、主に当院での不妊治療中に流産を経験された方への情報提供・初期対応を行っています。不育症を主目的とした受診をご希望の場合は、不育症専門外来を設けている大学病院・基幹病院への受診をお勧めします。

関連する診療・ページ
RELATED
不妊症・不妊治療
当院での一般不妊治療について
RELATED
子宮鏡検査・手術
中隔子宮など子宮形態異常の診断・治療
RELATED
慢性子宮内膜炎と着床不全
流産・着床不全の別原因について

当院で不妊治療中に流産を経験された方へ

まず検査で原因を確認し、
必要な専門施設へつないでいきます。一人で抱え込まずご相談ください。

📞 0561-88-0311