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慢性子宮内膜炎と着床不全

婦人科・不妊 / 子宮内膜炎

子宮内膜炎と不妊症

「なぜ着床しないのか」— その背景に慢性的な炎症が隠れていることがあります

子宮内膜炎は、子宮内膜に炎症が起きている状態です。急性の場合は発熱・腹痛などの症状がありますが、慢性の場合はほとんど無症状で、「なかなか妊娠しない」「胚移植を繰り返しても着床しない」という形で初めて気づかれることがあります。不妊治療を受けているにもかかわらず結果が出ない場合、慢性子宮内膜炎が背景にある可能性を一度評価することが重要です。

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まず知ってほしいこと
慢性子宮内膜炎は症状が乏しい

軽い腹痛・性交痛・少量の出血程度で、多くの方は自覚症状がないまま過ごしています。

反復着床不全・流産との関連が明確になってきた

反復着床不全の方の14〜67.5%、反復流産の方の9〜68%に慢性子宮内膜炎が報告されています。

治療すれば改善できる

抗菌薬による治療で多くの場合改善し、治療後は慢性子宮内膜炎のない方と同等の妊娠率・出生率が期待できると報告されています。

通常の検査では見つからない

超音波検査や一般的な血液検査では診断できません。子宮鏡検査や子宮内膜組織検査(CD138免疫染色)が必要です。

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急性子宮内膜炎と慢性子宮内膜炎の違い
特徴 急性子宮内膜炎 慢性子宮内膜炎
主な症状 発熱・腹痛・帯下増加 多くは無症状(軽い腹痛・出血のことも)
発熱 多い 少ない
主な原因 性感染症(クラミジア・淋菌)、骨盤内炎症性疾患(PID) 細菌感染・子宮内異物・ポリープ・筋腫、原因不明(1/3)
不妊との関連 卵管炎・卵管閉塞を経由して 着床不全・反復流産と直接関連
診断 臨床症状+PID診断基準 子宮鏡検査・CD138免疫染色(組織検査)

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なぜ着床しにくくなるのか

慢性子宮内膜炎が着床不全につながるメカニズムは完全には解明されていませんが、現在いくつかのことが明らかになっています。

ホルモン受容体の減少

慢性炎症が続くと、着床に必要なエストロゲン・プロゲステロンに反応する受容体が子宮内膜で減少します。「着床の窓」が機能しにくくなります。

免疫環境の乱れ

炎症に伴う免疫細胞の活性化により、受精卵を「異物」として攻撃してしまう可能性が高まります。

子宮内フローラの乱れ

子宮内は乳酸桿菌(ラクトバチルス属)が優位であることが理想的な環境です。細菌バランスが崩れると慢性炎症が引き起こされ、着床率に影響することが報告されています。

月経では自然に治らない

月経で子宮内膜は剥離しますが、慢性子宮内膜炎の炎症は内膜の深い部分(基底層)に存在するため、月経を繰り返しても自然治癒しにくいとされています。

複数の研究のメタアナリシスでは、慢性子宮内膜炎を治療した反復着床不全の方は、慢性子宮内膜炎のない方と同等の臨床妊娠率・生児獲得率が得られると報告されています。

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こんな方は慢性子宮内膜炎の評価を検討してください
  • 良好胚を複数回移植しても着床しない(反復着床不全)
  • 2回以上の流産を繰り返している
  • 妊娠反応は陽性になるが胎嚢が確認できないまま終わる(生化学的妊娠)を繰り返している
  • 過去にクラミジア・淋菌感染や骨盤内炎症性疾患(PID)の既往がある
  • 子宮内膜ポリープや粘膜下筋腫の切除後も妊娠に至らない
  • 原因が特定できないまま不妊治療を続けている
慢性子宮内膜炎はあくまで不妊・流産の「原因の一つ」です。胚の質・卵巣機能・精子の状態・免疫因子・着床の窓のずれなど、他の要因との総合評価が必要です。

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診断方法

慢性子宮内膜炎には確立した単一の診断基準がなく、複数の検査を組み合わせて評価します。

視覚的評価

子宮鏡検査

子宮内を細いカメラで直接観察します。慢性子宮内膜炎では、内腔の発赤・粘膜のむくみ・微小ポリープの多発(マイクロポリポーシス)などが特徴的な所見として見られます。外来で麻酔なしに実施でき、結果を当日確認できます。

💡 子宮鏡検査は慢性子宮内膜炎の診断だけでなく、子宮内膜ポリープ・粘膜下筋腫・子宮内腔の癒着など、着床を妨げる他の要因も同時に評価できる重要な検査です。当院では子宮鏡検査に対応しています。

組織学的確定診断

子宮内膜組織検査(CD138免疫染色)

当院で実施可能

子宮内膜の組織を少量採取し、形質細胞の目印であるCD138陽性細胞の有無を確認します。現在最も標準的な確定診断法です。子宮鏡検査のみでは診断できない約40%を補完できます。検体採取は短時間で行えますが、採取した周期は胚移植には使用できません。

【費用について】 CD138検査は現在、健康保険・先進医療いずれの適用もなく、全額自費診療となります(当院でも自費にて実施しています)。費用については受付・診察時にご確認ください。

補助的診断(参考情報)

子宮内フローラ検査(ALICE / EMMA)

当院では実施していません

次世代シーケンシング(NGS)を用いて子宮内の細菌環境を遺伝子レベルで評価する検査です。不妊専門施設を中心に普及しています。

ALICE検査 慢性子宮内膜炎に関連する10種類の病原菌をDNA解析で検出。原因菌に合った抗菌薬の選択に役立つ
EMMA検査 子宮内の乳酸桿菌(ラクトバチルス属)の割合など、細菌叢全体のバランスを評価

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治療の流れ

慢性子宮内膜炎の主な治療は抗菌薬です。治療後に再検査を行い、改善を確認してから次のステップへ進みます。

第1選択:ドキシサイクリン(ビブラマイシン)

100mgを1日2回、10〜14日間内服。クラミジアを含む多くの原因菌・マイコプラズマに有効。治療後、約80%の方で改善が見られます。

第2選択:薬剤変更または併用療法

第1選択で改善しない場合、フルオロキノロン系・メトロニダゾールなどへ変更または併用します。日本では耐性菌の問題もあり、菌種と地域の耐性データを踏まえた薬剤選択が重要です。

治療後の再評価

抗菌薬内服終了後、月経を1回はさんで子宮内膜組織検査または子宮鏡検査で改善を確認することが推奨されます。改善を確認してから胚移植等の次のステップに進むことで、より確実な治療評価ができます。

原因疾患への対応

子宮内膜ポリープ・粘膜下筋腫が原因となっている場合は切除が根本的解決になります。当院では子宮鏡下手術(MyoSure・レゼクトスコープ)に対応しています。

治療の効果について:適切に治療を行った反復着床不全の方では、着床率が改善し、慢性子宮内膜炎のない方と同等の妊娠率・出生率が得られたとの報告があります。ただし、完治までに複数クールの抗菌薬治療が必要になることや、治療後も改善が得られないケースも存在します。

急性子宮内膜炎について

急性子宮内膜炎は主に骨盤内炎症性疾患(PID)の一環として起こります。クラミジア・淋菌などの性感染症が子宮頸管から上行して引き起こされることが多く、卵管炎を合併すると不妊の重大な原因になります。

急性子宮内膜炎を疑う症状
  • 発熱(38℃以上)を伴う下腹部痛
  • 異常なおりもの(量・色・においの変化)
  • 不正出血・性交後出血
  • 子宮の圧痛・頸管運動痛
急性PID・急性子宮内膜炎の治療はPIDの抗菌薬治療に準じます。早期治療が卵管障害の予防・将来の妊孕性温存に直結します。発熱を伴う下腹部痛は早めにご相談ください。

💬
よくあるご質問
子宮内膜炎の検査は不妊治療のどのタイミングでやるべきですか?
一般的には、良好胚を2〜3回以上移植しても着床しない「反復着床不全」や、2回以上の流産を繰り返している場合に検討されます。当院では患者さんの状況を伺い、適切なタイミングでご提案します。
子宮鏡検査とCD138検査はどちらを受ければよいですか?
両者は補完関係にあります。子宮鏡検査は同時に他の着床障害の原因(ポリープ・筋腫など)も評価でき、CD138検査は組織学的な確定診断に有効です。それぞれの状況と目的に応じてご相談しながら決めていきます。
治療中は妊活を休まなければいけませんか?
CD138検査を行った周期は内膜を採取しているため、その周期の移植・タイミング法・人工授精はできません。ただし採卵周期には検査が可能です。治療(抗菌薬内服)期間中の妊活については、状況に応じてご相談ください。
慢性子宮内膜炎が治れば必ず妊娠できますか?
慢性子宮内膜炎の治療は、不妊・着床不全の一因を取り除くことです。胚の質・卵巣機能・免疫因子・精子の状態など、他の原因が同時に存在する場合もあります。総合的な評価のもと、一つひとつ丁寧に対処していくことが重要です。

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ご状況を伺いながら一緒に考えていきます。

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