クリニックだより

はじめに

子宮内膜ポリープは、閉経前および閉経後の不正性器出血の原因となりうる、比較的頻度の高い疾患です。
子宮内膜の細胞が何らかの原因(女性ホルモンであるエストロゲンも原因の一つとされます)で異常増殖し、子宮の内腔に突出したものが子宮内膜ポリープで、一般的には良性腫瘍であることがほとんどです。ポリープは数ミリ程度のサイズのものから、直径3〜4センチのものまで様々なサイズがあり、さらに多発する場合もあります。

症状

  • 不正性器出血あるいは中間期出血がある
    月経(生理)の量が多い、月経(生理)が長引く
    閉経後の性器出血がある
    不妊症(子供ができにくい)

上記いずれかの症状がある場合は受診されることをお勧めします。
出血の症状の程度は患者さんによっては、高度の貧血を示す場合から、わずかな出血程度まで様々です。
子宮内膜ポリープがあっても不正性器出血がない場合も多くあります。
一方、子供ができにくい原因を調べている中で経膣超音波や子宮鏡(子宮ファイバースコープ)で偶然に見つかることもしばしばあります

診断方法

子宮内膜ポリープの大きさにもよりますが、多くの場合は経膣超音波検査で診断が可能です。
当院では不正性器出血や不妊症の訴えのある患者さんに対して、超音波検査で子宮内膜ポリープの疑いがある場合に子宮鏡検査(子宮ファイバースコピー)をおこなっています(子宮鏡検査については「婦人科・子宮鏡検査」の項目を参照してください)。
子宮鏡(子宮ファイバースコープ)で直接肉眼的に子宮の中を観察することによって、より正確に診断することが可能となります。
ただし、子宮内膜ポリープだと診断するためには厳密には病理学的検査(摘出した組織標本を顕微鏡で観察する検査)が必要です。

管理方法

患者さんの年齢(閉経前なのか閉経後なのか)、症状(不正性器出血の有無、不妊症の原因となりうるかどうか(これまでの不妊治療歴も踏まえて)、症状を繰り返すのか、貧血の程度などといった、さまざまな背景と患者さんの希望を踏まえて管理・治療方針を決めます。
症状のある子宮内膜ポリープについては、経過観察だけでは症状の改善は基本的に望めないため、何らかの治療(薬物療法や手術療法)が勧められます。逆に、症状がなければ経過観察も可能です。当院でも子宮鏡下手術での切除をおこなっています(「子宮鏡下手術」の項目を参照してください)。
不妊症患者さんの場合においては、不正出血といった症状がなくとも、切除した方が妊娠に有利と考えられる場合には切除を勧めています。

子宮内膜ポリープおよび子宮粘膜下筋腫切除術の有用性について(治療成績)

子宮内膜ポリープ、子宮粘膜下筋腫合併不妊症に対して当院で子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術をおこなった症例について(2020年10月1日現在判明分)

2018年 13症例 → うち8例が妊娠成立(妊娠率 61.5 %)
2019年 14症例 → うち5例が妊娠成立(妊娠率 35.7 %)

※手術後の現在も当院あるいは他院で不妊治療継続中の症例がありますので、治療成績は今後も変動があり得ます。